Interview

小諸を経由地ではなく、降り立つ場所にしたい。だから、まずは入り口の「駅」から変える。

金山 裕美さん

小諸駅のまど 代表

「最初は、小諸に自分が住むことも、起業することも想像していなかった」

開口一番にそう話してくださったのは「小諸駅のまど」を運営している金山裕美さん。以前は、東京の町田に住み、企業で人事や採用に携わっていたと言います。

そんな金山さんがオーナーを勤める「小諸駅のまど」は、小諸駅舎内にあり、2019年に閉鎖した旧みどりの窓口跡地で営業しています。暖色のダウンライトと木のテーブルが居心地のいい駅直結型の電源カフェ。充電の他、Wi-Fiが使用できるので、電車を待つ間に仕事をして過ごす人や、迎えを待つ若者たちで賑わっています。

今回は、金山さんが小諸で開業するまでの経緯や、コーポラティブスペース「合間 (aima)」ができたことで、今後の小諸にどんなことを期待するのかなどのお話を伺いました。

数年間の2拠点生活を経て、父の故郷・小諸へ

私は東京・町田市出身で、小諸は父の故郷です。数年前までは、企業で人事や採用に携わっており、平日は会社へのアクセスの良い町田に、週末は家族のいる京都で過ごすという2拠点生活を3年ほど続けていました。

振り返ってみると、介護をしていた祖母と看護をしていた母が亡くなり、家族構成が70代の父親と2人きりになったこともそうした生活スタイルを送るきっかけでした。「父が元気なうちに、何か共通でできることを」と考え、小諸にある祖母の実家だった取り壊し寸前の古民家を、父と二人でリフォームすることにしたんです。築200年の古民家で、どこもかしこもボロボロで、とにかく苦戦しましたがなんとか自分たちの手でやりきりました。

たまたまご縁があって、リモートワークを受け入れてくれる会社に入り、フルタイムで人事の仕事をしながら小諸と町田の2拠点を往来する中でも、小諸だけで生活しようとは考えてはおらず、「今後、この古民家をどう活用しよう? 長期的にメンテナンスを続けるにはどうすればいいのだろう?」などと次々来る新たな課題にも直面して初めていろいろと調べ始めます。

そこで、誰かに意見やサポートをいただきたいと思っていたタイミングで偶然見つけたのが「おしゃれ田舎プロジェクト」です。小諸の商人や行政職員の方々が共に立ち上げた組織で、私自身としては誰かが古民家に興味を持ってくれたらな……というくらいの軽い気持ちで東京・有楽町で開催されたセミナーに参加したんです。

そうしたら、まさかこんなことになるとは(笑)。

駅にフォーカスをあて、小諸の未来に繋げる

「おしゃれ田舎プロジェクト」で出会ったのが、まさにここの場所。小諸駅舎内でかつて使われていた「旧みどりの窓口」の物件情報でした。なにより、電車好きな父からの「この物件を使わせていただきたい!」という想いもあり、多くの人が利用する駅でいつか古民家の活用アイデアも得られないかと想いながら、その過程も何だか楽しそうだと思い、夢中になって1週間で事業計画書を用意したのです。

これは自分の体感でもあったのですが、小諸は他の地方都市や田舎と同様、車社会であり、電車で小諸駅を利用する人の大半は、小学生から高校生。駅の待合室は高齢者など大人が利用しているので、学生さんは風が当たらない場所で寒さに耐えながら親御さんの迎えを待っている姿をよく目にしていました。そのため、まずは学生さんが温かい場所で待てたり居場所になるような場所があればと思っていたのです。

また、WI-FIや電源を完備し、親御さんが迎えが来たらすぐにわかるよう、ロータリーが見渡せるカウンター席は大きなガラス張に。そんな提案が無事に通り、「小諸駅のまど」が誕生。こうして、私自身の完全移住も決まっていったのでした。

小諸は今まで「通り過ぎる駅」という印象がありました。しかし最近では、近隣の佐久平、上田、軽井沢などからも人の流れがあるので、外から小諸を訪れた人がもっと居心地が良い場所をつくっていくことで、小諸駅周辺もいまよりもっと活気が出ると考えています。「小諸駅のまど」は、皆さんにちょっと休んでいただいて、「いろいろな場所へ行く拠点」のような場でありたいです。

リアルタイムで起きている小諸の情報を、通りすがりの方へ

小諸には古くから営んでいるお店もたくさんありますが、私たちのような外から来た人が新たなことに挑戦できるチャンスがある地域でもあります。地元の方の考えを尊重しながらもいろいろ挑戦していく楽しい方々が、これからも小諸に移り住んでくれると嬉しいです。個人的には、父が小諸出身ということもあり、彼ら世代が見てきた昔の小諸の雰囲気も参考にしながら、新しい要素も足していけたらいいなと思っています。

そして今回、小諸の中心地である荒町にコーポラティブスペース「合間 (aima)」ができました。この場所は、老舗お菓子屋「風味堂」さんのお店の前で、地元の方が多く集まるところです。そういった老舗企業の方と一緒になって荒町を盛り上げていくのに、とても最適な場所にあると思います。そして、私たち「小諸駅のまど」は、小諸駅からもどんどん人を送り出せるような体制をとっていきたいと考えています。

最後に、私が大切にしているのは「リアルタイムで起きている小諸の情報を、通りすがりの方にお伝えする」というコンセプトです。小諸駅に降り立った方々が、小諸市内全体を周りたくなるようなきっかけ作りをするのが目標です。これからの世代である若年層は車を保有せず、電車やバスの利用者も多いということもありますから、「駅からの視点」にもっと力を注ぐことで、彼らにとっても味わい深い魅力的な地方都市になっていくのではと期待しています。

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