Interview

自分を見つめ直す穏やかな環境が小諸にはある。その良さを「交流」や「発信」によって育んでいきたい

横田 志穂さん

中棚荘 取締役

「小諸を外から見ても、魅力的な街にしたい。そのために、いろいろな人たちが自ら交流を持つ時間を持てる場所が必要かもしれません」

そう語るのは、小諸にある“隠れ宿”中棚荘の取締役を務める横田志穂さん。

小諸出身で首都圏で働いていた経験もあるからこそ、地元と外の視点から小諸の良さや課題を感じており、街の中心地である荒町にできるコワーキングスペース「合間 (aima)」にも、人と人が交流する窓口になることを期待しているといいます。

この地で老舗旅館の宿泊業を営む横田さんが感じる、小諸らしさや、これからどうなったらもっと良い街になるのかなどの話を伺いました。

宿泊の目的は「観光」から「滞在」に変化してきている

私は小諸に生まれ、一度東京へ出てサービス業の仕事に就きました。長野と東京の間には新幹線が通っており、行き来するのは苦にならなかったため、小諸にもどきどき帰ってきていました。そして、そのたびに、一生住むなら豊かな自然環境があることや住み心地の良さから東京より小諸だなと感じ、10年ほど前に戻ってきたのです。

実は小さい頃から中棚荘にはお世話になっており、ここで働く人の仕事を近くで見ていたため、純粋にいつか戻ってきたい場所であったことは間違いありません。そんな私は現在、先代から引き継いで5代目を数えるこの宿で、お客様へのお食事の提供やブライダル関連の事業を手がけ、会社の取締役としても活動しています。

ここ中棚荘は作家・島崎藤村ゆかりの宿で、「もっと自分を新鮮に、そして簡素にすることはないか」(『千曲川スケッチ』より)と考え、文学者として生きようと決意した地でもあります。

宿もこの言葉をテーマに、お客様には肩肘張らずにゆったり過ごしていただきたいと思っており、お客様も時代の流れか観光というより、純粋に宿泊を目的に2泊、3泊される方も増えてきています。中には作家を目指している方が執筆活動に励むためにここで過ごされることもあり、島崎藤村の「初恋」という詩の中にも出てくる当館の名物「初恋りんご風呂」を楽しんでいかれます。

他にも、昔ながらの家と家の結び付きを大切にした伝統ある結婚式を挙げられる方がご利用されるのも中棚荘の特徴です。歴史ある建物だからこそ、ここの雰囲気に魅力を感じて下さる方も多くいらっしゃるのは嬉しいことですね。

自然も歴史もあるかこそ、もっと小諸の認知度を上げたい

信州・小諸は小諸城(現・懐古園)の城下町だった場所で、善光寺に通じる北国街道の宿場町でもあります。そして、坂の街でもあり、ここ中棚荘は標高600m、市の一番高いところだと2000m級の山々が連なっており、小諸市内でも体感できる温度や見られる景観はさまざまです。

この土地の利を活かして、これから拡がっていくであろうと期待されているのがワインです。日照時間が長い小諸は、ぶどう栽培に最適で、中棚荘も御牧ヶ原の高台に有機栽培を行うぶどう畑を保有しています。5代目となる当主・富岡正樹と、三男の富岡隼人が丹精込めてつくるぶどうを、オリジナルワインにして提供しているので、ぜひ当館を訪れることがあれば、本物の味を楽しんでいただきたいですね。

また、観光で訪れるなら中棚荘から近い懐古園・小諸城址公園がおすすめです。特に春は桜の名所100選にも選ばれていたり、秋の紅葉も見応えがあり、多くの方が県内外から訪れます。藤村記念館も近いので、ぜひ立ち寄ってみて欲しいですね。

ただ、宿泊業を営んでいる私の個人的な見解ですが、小諸市の知名度はまだまだ弱いなと思っています。「軽井沢のすぐ近くの街です」というのではなく、胸を張って「小諸です」と言えるようになりたいですし、「小諸に来てみたかったんです」と言われるような場所になると嬉しいですね。

人が交流できる開けた「ハブ」のような場所が、新しい価値を生む

小諸にはたくさんの魅力がありますが、その情報発信は課題かなと思っています。どこの地域もそうかもしれませんが、地元にいる人ほど自分の住む場所の魅力が見えづらくなっていたり、例えば農家さんであれば自分の作っている農作物にすごく自信を持っている一方で外に向けて発信しないことで良いものが埋もれがちになっています。

背景として、地元の人同士や県外の方々とのコミュニケーションや交流ができる場所が今までなかったことがあるかもしれません。私自身も積極的に、街や地元の方たちの関わる場に行けていませんでしたが、人と人同士の交流のハブのような開けた場所があるといいなと思っていました。むしろ、私たちの世代が場を作る時代だとも感じていた中で、小諸の中心エリアである荒町にできたコワーキングスペース「合間 (aima)」には可能性を感じています。

田舎は車社会ではありますが、コンパクトシティを掲げている小諸の中でも、歩いて入りやすい立地にあり、コロナ禍でワーケーションなど仕事をしながら滞在するような人も増えてきています。そんな中で、ここでどんな出会いがあるか楽しみです。中棚荘は、自分を見つめ直す穏やかな時間が流れている場所なので、温泉に入ったり部屋でゆっくりしながら、ときどき街に出て合間 (aima)でお仕事をされるなどのライフスタイルも出てくるかもしれませんね。今、小諸にいる人たちと、新しく小諸に来ていただいた人との交流の機会を増やしながら、何か新しいものや、これからずっと継続できるものが生まれる機会や場になればとても嬉しいです。

Say Hello!

合間 (aima) に関するお問い合わせ

お問い合わせ

合間 (aima) に関するお問い合わせ

Say Hello!