Interview

人それぞれ自分のリズムで仕事や生活ができる、懐の深い街へ

鴨川 知征さん

ビストロ アオクビ 代表

何かをやりたいという人たちが小諸に集まってきている。街にデザイン力が加われば、もっと面白くなる。

そう語るのは、2020年に理容店の空き店舗を活用してオープンしたイタリアンレストラン「ビストロ アオクビ」のオーナー、鴨川知征さん。

首都圏のレストランで働いていた鴨川さんは、ちょっとしたきっかけで小諸と関わるようになり、10年ほど前に地域おこし協力隊としてこの地へ。移住者として小諸の街を見て感じてきたこと、これからどうなったらもっと良い街になるのかなどの話を伺いました。

人のつながりで、人生が豊かになる場所

私は神奈川県横須賀市で生まれ、平塚市で育ちました。住んでいたのは、海から歩いて3分ほどのところだったので、海無し県の長野に移住してきた当初はまったく違う環境に来たと思いましたが、結果的に自分の「やりたい」という想いを形にできていると思います。

移住のきっかけは、今から10年くらい前。当時、勤めていた東京のレストランのお客様が小諸で食のイベントを開催するというので、小諸が長野県にあるというのもわからないくらいの知識でこの地を初めて訪れました。いざ来てみると、自然が豊かで、住んでいる人とのつながりもでき、野菜の生産地でもあるので料理を作りにまた呼ばれたりして……次第に東京と小諸を行ったり来たりの2拠点生活をするまでにハマっていました。

そのタイミングで、友達から「地域おこし協力隊という制度があるよ」と教えてもらい、応募したら受かったことが、今に至る経緯です。

前々から自分のお店を持ちたいと思っていましたが、東京は競合店舗が多く難易度は高い。それに比べ、小諸は人のつながりが作りやすく、個人事業主として週末は地域イベントに参加したり、軽井沢の別荘に行って料理を作るなど、仕事の幅が広がり、開業するまでに新しい発見もたくさんありました。

このビストロ アオクビ (BISTRO AOKUBI)をオープンしたのは2020年4月。美味しい野菜の産地である小諸なので、ランチは前菜が15種類くらいあるプレートを出したり、ディナーでは豚を塊でドーンと出したり。コロナ禍の影響もありましたが、テイクアウトも取り入れるなどいろいろと工夫をしながら運営しています。

街をリブランディングするキュレーターが生まれてほしい

東京から地方に移住すると何かと不便になると思う人もいるかもしれませんが、私は小諸に来てから困ったことがほとんどありません。しいて言うと買い物くらいですが、今はネットで注文すれば何でも届く時代なので問題ありません。

この店舗を探す時も、地域おこし協力隊の仕事で物件を見る目が肥えており、地域の人とのつながりができていたので、大家さんからも「あなただったらいいわよ」と言って貸してくれました。10年以上閉まっていた床屋の跡地なんですが、タイルや天井の感じはそのままに、外観もまったく変えず、一部をリノベーションしただけで、まるでパリのお洒落なお店のような雰囲気を出すことができました。

また、この店がある北国街道沿いは歴史的な建物が多い街並みで、観光スポットになっているのにかなり素朴な雰囲気。他にも個性的なお店がたくさんあるので、街歩きを楽しみながら良いシナジーが生まれるといいかなと思っています。

課題としては、小諸に限らず地方にありがちなのが、デザイン力やブランディングの考え方が足りていない点。街の強みやコンセプトを意識しながら、統一感を持ったまちづくりができるといいですね。

その点、北国街道沿いに新しくできたコーポラティブスペース「合間 (aima)」には、個人でもチームでもいいから、人と人、人と地域をつなぐキュレーターのような役割が生まれることを期待しています。街全体をデザインすると言うと大袈裟ですが、そういった意識を持った人たちがいることが、街がさらに盛り上がることにもつながるのではと思っています。あの建物は昔、小諸が栄えていた時代を象徴するような場所の1つなので、当時を意識しながらリブランディングできるといいかもしれませんね。

街のインフラを活かし、それぞれが「好き」を大事に育てていく

小諸は東京から1時間程度で行き来できますし、浅間山や御牧ヶ原台地などの美しい景観が広がっていて、好きな人にはたまらない場所だと思います。近くに軽井沢や佐久平など、新幹線が止まる駅もありますが、小諸はそれらの駅とはちょっと違って、チェーン店があまり進出しておらず、個人商店が多いことなども街の特徴です。

だからこそと言ってはなんですが、人それぞれ自分のリズムで仕事や生活ができる、懐の深い街としての魅力があると思いますし、今後もそうなっていければいいですね。例えば、小諸の野菜はブロッコリーだけが特産ですというのではなく、いろいろな品目を作っており、土壌がいいので何を作っても美味しくなるというブランディングができる。作物を作るならまずは土を耕すように、街のインフラをみんなで作れば、あとは好きにやっていいみたいなことができればいいですね。

小諸は音楽の街でもあるのですが、その割にはストリートに音楽がないので、かっこいいインターネットラジオ局があってもいいし、クリエイティブな人が小諸の面白さを発信してくれてもいいと思う。この店も、客席を増やしたり店先にウッドデッキを作ったりして、そんな多様な人たちが集まる場にもしていきたい。こうやって、一人ひとりが自分のリズムを大切にしながら生きていくことで、街の魅力が増していくのかなと思っています。

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