Interview

最終的に目指すのは、美しいもの。高原に育む、詩情あふれる文化都市へ

依田 雄さん

読書の森 代表

「喫茶は、単に時間を消費する場ではなく、想像力、クリエイティヴィティがインスパイアされる空間なのです」

そう語るのは、 小諸の御牧ヶ原(みまきがはら)にて「読書の森」を営む依田雄さん。この場所を心から愛しているとも話す依田さんは、この地で喫茶店やゲストハウスを運営したり、盆踊りを通じて地域の活力や繋がりを復活させたりと様々な活動を行っています。

そして、小諸の中心部、荒町にできたコーポラティブスペース「合間 (aima)」についても、詩情あふれるような美しい街づくりの一環になればと希望を話します。今回はご自身の仕事のやりがいや、小諸が今後どんな街になって欲しいかなども含め、いろいろとお話を伺いました。

御牧ヶ原の大地に惚れ、ここで喫茶文化を伝えている

生まれは、小諸の千曲川沿いの集落の一つ。私が中学生の頃くらいまで、小諸の街中は商業都市として栄えていた記憶があります。特に北国街道と中山道のちょうど分岐点にあたるエリアは、昔から人・金・文学といろいろなものが盛んに交わっていました。私が住んでいた集落から街の中心部まではだいぶ遠かったのですが、よそ行きの服に着替えて、祇園祭や恵比寿講などのお祭りに出かけたものです。

その後、大学時代に住んでいた京都では喫茶文化に目覚めました。喫茶店は単にお茶を飲みながら時間を消費する場所ではなく、クリエイティブな英気を養う大事な時間を提供してくれる場所でした。私自身、若くて吸収率が高かったこともありますが、そのカルチャーにとても影響を受けましたね。

今、ここ御牧ヶ原(みまきがはら)で営んでいる「読書の森」を1993年にオープンした理由もそんなところにあります。この大地の美しさに幼少の頃から魅せられて、おこがましくはありますが、この地をさらに美しく整えたくて茶房を開きました。丁寧に焙煎された最上質の豆を使った、『控えめに言っても信州一美味しい』と自負している珈琲をお客様に提供しながら、最近は喫茶の枠をもう少し広げ、モンゴルのゲルや土と藁でできたストローベイルハウスを建て、泊まれるアートフィールド(ゲストハウス)としても運営しています。

今の仕事のやりがいを端的に言うと、野原作りであり、これが一番楽しいライフワークです。だから、私は自分のことを「野原アーティスト」とも呼んでいるのです。名乗ったもん勝ちなんで(笑)。

自分が存在するこの場所を心から愛している。それが私の才能

いまだに、読書の森を訪れる方のなかには、私たちがこんな場所で商売を営んでいることに驚かれる方もいます。しかし、もし私たちに才能があるとしたら、この御牧ケ原という大地をこよなく愛して活動していることだと思っています。場所を愛することはとても大事です。だから、ここで商売をしながら暮らしていること自体が生き様そのものと言ってもいいかもしません。

もちろん、自分たちが楽しむだけではありません。みなさんにもこういう美しい自然があることを知っていただきたいと思っています。御牧ケ原は小諸の自然の一部であり、市民だけの場所ではないからです。

例えば、数年前から開催している「里から始まるインターナショナル盆踊りフェスタ」。きっかけは、外国から来られたゲストに夏祭りや盆踊りを見せてあげようと街へ連れ出した時に、どこもやっていなかったことから始まります。祭りは地域を元気にする象徴であり、歴史・文化的にも大事なものです。それが高齢化などにより縮小されるのは、地域の誇りを失うことになり、単純に寂しいというだけでは収まらない問題だと感じたのです。

それなら、と友人のミュージシャン達にも声をかけ、自分たちのオリジナルの盆踊り曲を作り、振付もつけて、私たちなりに祭りを復活させました。毎年100から150人くらいの人にこの盆踊りにに来ていただけるようになり、国内外の人にも紹介できる活動になってきているのが、私たちの喜びでもあり誇りでもあります。

小諸の歴史を支えてきた「荒町」の復活が、とても嬉しい

高原に育む詩情あふれる文化都市。それが御牧ヶ原の読書の森の願いでもあり、小諸市もそうであってほしい。問題は、どうやって「詩情あふれる」場所になり持続可能なものにしていけるかです。

例えば、この場所は黙っていればできるのではなく、ほったらかしにすれば藪に覆われてしまいます。里山と一緒で、人の手が入らないと誰にとっても気持ちの良い場所にはなりません。定期的に薮を刈り払うだけで非常に良い景観が復活するのに、それをしないことで美しい場所が現れないのはもったいないことですよね。

小諸の市内も何も手を加えなければ、美しさはなくなっていきます。その点でも、昔、街が元気だった頃の中心エリアである荒町にコーポラティブスペース「合間 (aima)」ができたことで、年齢も性別も国籍もジャンルを問わず想いを持った人が交わりインスパイアされていける場になっていくといいですね。こういった場所が、詩情あふれる街づくりの中核の一つになれば、それは私が小諸市に対して思い描く最高の将来図の確かな一枚になるかな。

私が最終的に目指すのは、美しいものです。もともと地力があり小諸の歴史を支えてきた荒町が、少しずつ復活してきたことがとても嬉しいし、私も情報交換したり、協力できることはしていきたいと思っています。

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